なぜ、店舗を持たずに出張採寸をしているのか。

Order Suit KAMAKURAには、いわゆる「店舗」がありません。

世田谷区に、仕事をするためのきちんとした事務所・拠点はあります。

常連のお客様や地元のお客様には、ここへ来ていただいて、生地を見ながら一緒に話をして、そのままご注文いただくこともあります。

場合によっては、自宅でサロンのように採寸することもあります。

なので、
「店も事務所もないから、お客様のところへ行っている」
という意味での無店舗ではありません。

じゃあ、なぜ店舗を構えず、わざわざ出張採寸をしているのか。

ちゃんと理由があります。

店舗に使うお金を、スーツに使いたい。

店舗を構えれば、当然ですが維持費がかかります。

家賃だけではありません。

内装、什器、光熱費、在庫。

その費用は、どこかで商品の価格に乗せなければ商売として成り立ちません。

私は、それをやりたくありませんでした。

店舗を維持するためのお金をお客様からいただく代金に転嫁するくらいなら、その分をスーツそのものに使いたい。

生地でもいい。

芯地でもいい。

ボタンでも、仕様でも、仕立てでもいい。

私はそっちに経費をベットしたいんです。

もちろん、立派な店舗には店舗の価値があります。

ただ、私がやりたいスーツ屋には、そこが最優先ではありませんでした。

一人のお客様に、ちゃんと時間を使いたい。

店舗を開けていれば、いつ誰が来るか分かりません。

接客中に別のお客様が来ることもあります。

それは店舗なら当たり前のことです。

でも私は、基本的に一人でやっています。

だったら最初から完全予約制にして、その時間は、そのお客様だけを見る方がいい。

一日に何人も採寸したいわけではありません。

身体を見る。

今着ている服を見る。

何が好きなのか聞く。

何が嫌だったのか聞く。

どういう仕事をしているのか。

どこで着るのか。

どう見られたいのか。

そこまでやっていたら、そんなにポンポン次のお客様には行けません。

だから、完全予約制です。

採寸する場所も、結構大事なんです。

これは出張採寸を始めてから、より強く感じるようになりました。

お店に行って採寸されるって、意外と緊張します。

鏡の前に立って、

「力を抜いてください」と言われても、
力、入りますよね。(^^)

でも、ご自宅なら違います。

私が準備している間、ソファに座っていてもいい。

お茶を飲んでいてもいい。

いつものように立って、いつものように話している。

その方が、その人の普段の姿勢が見えます。

採寸は、メジャーで数字を取れば終わりではありません。

立ち方や姿勢、身体のクセを見る仕事でもあります。

だから私は、お客様が自然でいられることも、採寸精度の一部だと思っています。

今持っている服は、ものすごく重要な資料です。

出張すると、もう一つ大きな利点があります。

クローゼットが見られることです。

もちろん、勝手に見るわけじゃありませんよ。(^^)

「このスーツは気に入っている」

「これはなんとなく着なくなった」

「このパンツは穿きやすい」

「このシャツは首が苦しい」

そういう服を実際に見せてもらえる。

必要なら、現物を採寸します。

すると、その人が何を心地よいと感じて、何を嫌だと感じているのかが、かなり見えてきます。

言葉だけでは分からなかったことが、服を見ると分かることがあるんです。

新しい一着を作るのに、
今まで着てきた服を見ないのは、私はもったいないと思っています。

ご家族の一言が、答えになることもあります。

これも出張ならではです。

ご自宅で話していると、奥様やご家族が、
「そのジャケットはよく着てるよね」とか、

「私は、もう少しこっちの方が似合うと思う」

なんて入ってくることがあります。

これが結構、大事だったりします。

本人が思っている自分と、毎日見ている人から見たその人は、少し違う。

私はスーツだけを格好良くしたいわけではありません。

着ている本人が、なんか格好いい。

そこを作りたい。

だから、第三者から見たその人の印象も、使えるなら設計材料にします。

「無店舗」ではなく、店舗営業をしない。

たぶん、これが一番近い言い方だと思います。

Order Suit KAMAKURAには、仕事をするための拠点があります。

そこで生地を見ていただくことも、ご注文いただくこともあります。

でも、毎日店を開けて、お客様が来るのを待つという営業形態にはしていません。

こちらから伺う。

必要なら、こちらへ来ていただく。

その人にとって一番いい環境を選ぶ。

その方が、私のやりたい仕事には合っていました。

店舗を持たないこと自体が目的ではありません。

余計な固定費をスーツへ戻すこと。

一人のお客様に時間を使うこと。

自然な状態で身体を見ること。

その人が今まで着てきた服まで含めて、次の一着を考えること。

そのために、この形にしています。

派手な店舗はありません。

でも、採寸する場所には困りません。

生地もあります。

工場もあります。

そして、目の前のお客様を見る時間があります。

私には、それで十分でした。

Order Suit KAMAKURAは、

「店舗がないスーツ屋」ではなく、
「店舗営業をしないスーツ屋」です。

その方が、私の考えるスーツを作りやすいから。

ただ、それだけの理由です。

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