本切羽って、なんで?

【鎌倉のスーツブログ】

サージャンズカフ?私はあえて「ドクターズカフ」と呼びます。

スーツの袖ボタンが開く仕様。

これを、
「サージャンズカフ」と言います。

でも、この言葉。
一般の方にはあまり伝わりません。

なので私は、お客様には
「ドクターズカフですね。」とお伝えしています。

その方がイメージしやすいからです。

そして、「実はこのドクターとは、軍医さんのことなんです。」とお話を続けます。

昔の戦場では、

軍医が緊急処置をするとき、
袖口を開いて腕まくりができるようにした。

そんな話が、
サージャンズカフの由来として語られています。

ただ、
これは有名な説ではありますが、
服飾史では決定的な史料が見つかっているわけではありません。

実際には、

袖ボタンそのものも、
軍服の装飾だった、
袖で鼻を拭く癖を防ぐためだった、(有名なナポレオン説)
など、いくつもの説があります。

そして、もう一つ。

イギリスの近衛連隊では、
ボタンの並び方によって所属連隊を識別する文化がありました。

例えば、

グレナディアガーズは1個ずつ。

コールドストリームガーズは2個ずつ。

スコッツガーズは3個ずつ。

このように、
ボタンには所属を表す意味が与えられていたんです。

つまり、

袖ボタンは、ただ付いているわけではない。

そんな歴史もあります。

だから私は、

袖ボタンを見ると、
「意味を持ったディテール」という見方をしてしまいます。

だから私は、

「歴史的に正しいから本切羽にしましょう。」

とは言いません。

でも、サージャンズカフという文化が生まれた。

それは間違いなく、スーツ文化の一つです。

だから私は、
その遊び心を楽しみたい。
そこが「粋」な装いでもありますね。

逆に、本切羽にしないなら、
私はボタンホールすらも作らず、ボタンだけ付ける仕様も好きです。

「開き見せ」のように、
開かないのにボタンホールだけを作るより、
最初から飾りボタンとして潔く仕上げる。

私は、その方が美しいと思っています。

なぜか。
袖ボタンが付き始めた頃の軍服は、
必ずしも袖が開く仕様ではありませんでした。

つまり、
「袖ボタン=本切羽」ではなかった時代が長くあったんです。

さらに、
近衛連隊ではボタンの並び方そのものに意味がありました。

だから私は、
ボタンだけの袖を見ると、
「袖ボタンは、本来意味を持つディテールだった。」

そんな時代を思い出します。

本切羽とは違う、
もう一つの歴史を感じられるんです。

だから、
本切羽にするなら、軍医への敬意として。

ボタンだけにするなら、
袖ボタンそのものに意味があった時代への敬意として。

私はどちらも好きです。

結局、大切なのは、
「本切羽だから格好いい。」ではありません。

「なぜ、その仕様を選ぶのか。」

そこに理由があること。

“なんとなく”ではなく、意味を知って選ぶ。

その一着は、少しずつ愛着になっていきます。

私は、そんなスーツが好きです。

“なんとなく”を終わらせる。
拘りと理由は、やがて愛着になる。
だから、人は静かに尖る。

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