【一着の設計記録:ロロピアーナ】

ご納品スーツのご紹介

ロロ・ピアーナで、スーツが欲しかった。

このスーツについて、以前の記事では、「七五三の撮影に合わせて作った」
と書いていました。

でも、正確には違います。
七五三のために作ったわけではありません。

もっと単純です。
ロロ・ピアーナの、この生地でスーツが欲しかった。

本当に、それが始まりです。

「カッコいいじゃないですか。この生地。」

選んだのは、
Loro Piana 365。

理由を聞かれたら、
「使いやすそうだったから」とか、

「式典にも対応できるから」
とか、いろいろ説明することはできます。

でも、一番最初にあったのはそんな理屈じゃありません。
カッコいいじゃないですか。この生地。

これでスーツが欲しかったんです。
採寸士だからといって、自分のスーツまで全部理屈から始まるわけではありません。

欲しいものは、欲しい。

ただし、作るとなったら話は別です。
せっかく質の良い生地を使うなら、仕事だけでなく、式典にも着ていける一着にしよう。そこから設計を考えました。

ベスト姿まで、一着のスーツとして考える。
仕様は、シングルの3ピース。

ジャケットはもちろん、
ベストにもノッチドラペルを付けました。

理由は単純で、
ジャケットを脱いだ時にも、ちゃんと様になるようにしたかったから。

3ピースは、ジャケットを着て完成ではありません。
ベスト姿になった時にも、その人の装いは続いています。

だから、そこまで含めて一着として考えました。

そして、パンツは2本作りました。
これは見た目ではなく、実用のためです。
この生地は、比較的繊細です。

スーツを着続けていると、ジャケットより先にパンツが傷んでくることが多い。

だったら最初から、パンツを2本作って、交互に履けばいい。
同じ一本を連続して酷使しなくて済みます。

結果として、生地を休ませることもできる。
気に入ったスーツなら、なるべく長く着たい。
そのための2パンツです。

こういうところは、デザインというより、スーツをどう使うかまで含めた設計
だと思っています。

自分の身体だからこそ、誤魔化せない。
体型補正については、他の自分用スーツと基本的に同じです。

猫背。
前肩。
左右差。(右の強い撫で肩。)
少し出た肩甲骨。

平尻。
X脚気味。
……書いていて嫌になりますが(笑)、いろいろあります。

ま~メンドクサイ体型なんです。私。

だから、それぞれに補正を入れる。
ただし、一つの特徴だけを強く補正すればいいわけではありません。
補正同士が影響することもあります。

全体のバランスを見ながら組み合わせる。

方法は、もちろん企業秘密です。

自分の身体ですから、「まあ、こんなもんか」は出来ません。
自分自身も、採寸士としての実験台みたいなものです。

七五三にも、ちょうどいいと思っていました。
このスーツを作った頃、七五三がありました。

無地で、品があって、式典にも馴染む。

だったら、「これを着ればいいな。」と思っていました。

七五三でも、私の考えは同じです。
パパは黒子。

主役は子どもです。
父親が必要以上に目立つ必要はありません。

無地のきちんとしたスーツで、その場に馴染む。
それで十分格好いい。

……と思っていたんですが。

当日は、大雪でした。寒い。なんたって寒い!!!
とてもじゃないけど、このスーツでは無理でした(笑)。

結局、しっかり冬物のスーツを着て行きました。
なので、このロロ・ピアーナのスーツ、七五三のために作ったわけでもなければ、
七五三で着てもいません。

以前の記事とは、だいぶ話が違います(笑)。
でも、それでいいと思います。

スーツは予定通りに着るためだけのものではありません。

天気も変わる。
予定も変わる。
生活の中で、結局よく手が伸びる一着になるかどうか。

私はそっちの方が大事だと思っています。
結局、めちゃくちゃ着ています。

このスーツ、今でもお気に入りです。かなり着ています。
ロロ・ピアーナだから大切にしまっておく、ではありません。

良い生地だからこそ、着る。
そして長く着たいから、2パンツにして休ませながら使う。

最初は単純に、「この生地、カッコいいな。欲しい。」から始まりました。

でも、結果として、仕事にも使える。
式典にも使える。
ベスト姿でも成立する。

そして何年経っても、普通に手が伸びる。
私にとっては、そういうスーツになりました。

七五三のスーツを相談されたら。

今、お客様から、「子どもの七五三に着るスーツを作りたいんです」
と言われたら、

私はまず、「無地のスーツは持っていますか?」と聞くと思います。
七五三だから、特別なデザインにする必要はありません。

むしろ主役は子どもです。

ネイビーやグレーなど、ちゃんとした無地の一着があれば、仕事にも使える。
別の式典にも使える。

何年後かに写真を見ても、変に古く見えにくい。

その日のためだけのスーツではなく、その人の生活に残る一着を作る。

私は、その方がいいと思っています。

今回の一着

生地 Loro Piana 365
色柄 無地
仕様 シングル3ピース/2パンツ
ベスト ノッチドラペル
用途 仕事・式典など
設計 長く使うことまで考えた、汎用性の高い3ピース

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