【一着の設計記録:カントリー調スーツ】

ご納品スーツのご紹介

自分のスーツくらい、好き勝手に作っていい。

今回は、お客様のスーツではありません。
私のスーツです。

Order Suit KAMAKURAの最上位モデル『Newsman』。
そのNewsmanで初めて自分用に作った一着です。

何か仕事上の必要があったわけでもない。
お客様に見せるサンプルが欲しかったわけでもない。

単純です。
こういうスーツが欲しかった。だから作りました。
カントリーっぽい。でも、仕事にも着ていける。
頭の中にあったのは、1950年代あたりのカントリー調のスーツです。

ただ、当時のものをそのまま再現したかったわけではありません。
完全にカントリーへ振ってしまうと、仕事では少し使いにくい。
かといって、普通のビジネススーツに柄だけ入れても面白くない。

ちゃんとカントリー感がある。
でも、普通に仕事にも着ていける。

その間を狙いました。
生地を見ていて、「あ、これだな。」となったのが、CANONICOのグレンチェック。

赤いウインドウペンが入っています。
柄としては、プリンス・オブ・ウェールズに近い構成です。

英国的な匂いはちゃんとある。でも、野暮ったくなり過ぎない。
私の頭の中にあった一着には、これが一番近かった。

だから選びました。

そして、作る相手が結構面倒くさい。私です。(笑)

自分で言うのもなんですが、体型はなかなか面倒です。

猫背。
前肩。
右肩が強めの撫で肩。
肩甲骨も若干出ている。

お腹も……若干。^_^

下へ行けば、平尻。
さらにX脚気味。
難点満載です。

採寸データについては、以前、私の師匠に採ってもらったものを基準にしました。
問題は、その数字から先です。

これだけ体型の特徴が重なると、一つの補正だけでは済みません。
こちらを直せば、あちらとの兼ね合いが出る。
補正を入れ過ぎてもおかしくなる。
逃がすところも必要になる。

結局は、複数の補正をどう組み合わせて、全体として破綻させないか。

そこを考えることになります。
具体的な方法は……

もちろん企業秘密です。(笑)

でも、自分の身体だからこそ誤魔化せません。
鏡を見れば分かる。着ればもっと分かる。

自分が一番うるさい客です。
「思った通りに出来たな。」

完成して、初めて着た時。
感想は意外と淡々としていました。

「思った通りに出来たな。」です。

大感動したとか、想像を超えていたとか、そういうことではありません。
むしろ、計算したところに、ちゃんと着地した。
という感覚でした。

生地を選んで、
身体を見て、
補正を組み合わせて、全体のバランスを決める。

頭の中にあったスーツが、そのまま目の前に出てきた。
自分の一着なので、それで十分です。

ところが、初めて着て仕事へ行く朝。
このスーツを初めて着て、仕事へ行こうとしていた時です。

息子が私を見て、「パパ、このツーツ、カッコいい!!」


当時はまだ「スーツ」がうまく言えなくて、「ツーツ」でした。

そして、「これ、ちゅき。」と。
……設計だ、補正だ、1950年代だ、カントリーだと散々考えて作った本人に対して、
息子の評価は一瞬でした。(笑)

でも、案外それでいいのかもしれません。
作る側はいろいろ考えます。
肩がどうとか、着丈がどうとか、補正がどうとか。
理由をつけて、数値にして、細かく設計する。

でも、それを全部説明しないと格好良く見えないスーツでは意味がない。

何も知らない人が見ても、なんか格好いい。
最後は、そこに行きたい。

Newsmanで初めて作った、自分のための一着。
私にとっては「計算通り」。

息子にとっては、「このツーツ、ちゅき。」でした。

それなら、まあ成功でしょう。^_^

今回の一着

生地 CANONICO TROPICAL Super120’s/グレンチェック+赤のウインドウペン
モデル Newsman
仕様 3ピース
イメージ 1950年代頃のカントリー調をベースに、ビジネスでも使えるバランスへ
設計 猫背・前肩・左右差・撫で肩・肩甲骨・平尻・X脚等を考慮して補正を構成

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